通信制大学院国際社会開発研究科修士課程 修士論文指導

  修士論文指導
 
 以下は、通信制大学院における修士論文指導の一端をご紹介するために、
 2002年度リサーチ科目「開発政策」「開発制度」に所属する院生とのやりとりの一部を抜粋したものです。
 掲載について参加院生の承諾を得ていますが、発言者の個人情報保護の目的から、内容に修正・編集
 の手を加えてあります。(穂坂光彦)

   このページは L さん に対しての修士論文の指導内容をご紹介いたします。
 尚、構成上ふられています番号は連番になっておりませんのでご了承ください。
  
 
  L さん ( No.4 -- No.53 ) インドネシア都市貧困層のセーフティネット
 No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
 

   別ページにて J さんP さん に対しての修論指導内容を紹介しています。
 
  J さん ( No.6 -- No.46 ) 南アジアの栄養プログラム
 No.6No.19No.35No.36No.45No.46
 
  P さん ( No.15 -- No.48 ) フィリピンNGOによる持続的開発モデル
 No.15No.23No.39No.48
 

     

 
  No.4 (2002/05/05 10:23)  研究テーマ紹介
  Name: L
 
  はじめまして。Lです。自治体職員です。

研究テーマは「都市居住貧困者・社会的弱者自立のためのソーシャル・キャピタルと
地方政府の役割〜インドネシアを事例に〜」です。
日ごろ、日本の地方(地方政府にに限らずNPOや市民団体でも、いろいろな主体が考えられます)
が主体となった国際協力って?途上国に必要とされる支援って?住民が主体となったまちづくりって?
など考える中で、では、具体的にインドネシアのジョグジャカルタでは?・・・というのが発想の原点です。
外部から持ち込まれた開発や上から押し付けられた開発、それらをすべて否定するわけではありませんが、
そういった開発には限界がありますよね。
いかに住民の、また、その地域の力を引き出すことができるかがポイントとなると考えています。

また、インドネシアの経済危機で見られたように、ソーシャル・セーフティ・ネットの整備が不十分な
途上国では、経済危機や災害時には貧困者や社会的弱者が直接の犠牲者となってしまいますが、
財政的にも人的にも制限がある途上国で、先進国並みにソーシャル・セーフティ・ネットを整備するのは、
かなりの無理、また無駄がある気がします。
そこで、コミュニティベースでの相互扶助を基本としたソーシャル・セーフティ・ネットの発展の可能性を
考察するために、まずは、貧困者や社会的弱者の自助活動や、コミュニティベースでの相互扶助活動に
注目したいと思います。

具体的には、インドネシア・ジョグジャカルタ市を事例にして、都市に居住する公有地の不法占拠住民、
スカベンジャー、ストリートベンダー、セックス産業に従事する人々など、いわゆるインフォーマルな
セクターに従事して生計を立てている、貧困者・社会的弱者が、経済危機以降、実際に収入の減少に
対してどのように対処し、危機を乗り越えてきたか調査することにより、彼らの潜在能力について考察する
とともに、彼らが所属する町内会や女性グループなどのコミュニティ組織や宗教団体、また同業の
職業グループやNGO等市民団体が、危機に直面している貧困者や社会的弱者に対してどのような支援を
行ってきたかを調査することにより、また、地域に存在するマイクロ・クレジット等、人々が自立するための
ツールとその効用について調査することにより、これら貧困者や社会的弱者が自立するために必要な
ソーシャル・キャピタルについて考えてみようと思います。

それから、そのソーシャルキャピタルを増強させるために、地方政府に求められる役割について考察し、
次には、その求められた役割を地方政府が担うために必要とされる能力についての考察、
そして、更には地方政府の能力増強のために、日本の地方(特に地方政府)に求められる支援、
もしくは、パートナシップの内容とは?と順を追って論文を展開させようと考えています。
ご参考までに、現在考えている目次を付けておきます。


 
はじめに 問題意識と課題の設定
 
第1章 インドネシアのソーシャル・セーフティ・ネット
 第1節 経済危機と人間の安全保障
 第2節 インドネシアの社会制度
 第3節 地方政府への権限委譲
 
第2章 インドネシアの都市居住貧困者・社会的弱者と
ソーシャル・キャピタル〜ジョグジャカルタ市の事例を中心に〜
 第1節 経済危機と相互扶助
 第2節 貧困者・社会的弱者の自立に必要なソーシャル・キャピタル
 第3節 コミュニティベースのソーシャル・セーフティ・ネットとソーシャル・キャピタル
 
第3章 ソーシャル・キャピタルと地方政府
 第1節 地方政府と地域組織とのパートナーシップ
 第2節 地方政府の能力養成と持続可能な地域開発
 第3節 日本とのパートナーシップ
 
むすび
 
参考文献一覧
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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  No.5 (2002/05/05 13:57)  
  Name: 穂坂光彦
 
  L さん こんにちは

このテーマは、私自身の現在の関心事のひとつでもあります。
つまり私の興味から見れば、いいポイントに目をつけてるなー、という気がします。
ぜひ一緒に勉強したく思います。実は「途上国社会経済論」ご担当の大内穂さんにお声をかけられ、
この2年間「グローバルガバナンスと貧困戦略」という研究会に加わってきましたが、私は世銀流の
貧困戦略よりも、この論文のような「住民の生存戦略」に注目する方が、リアリティが高い、と考えています。

 
1. このくらい正面からソーシャルキャピタル(SC)を扱うのであれば、やはり、そもそもSCとはなんぞや、
という議論を踏まえておく必要がありますね。
「開発基礎論III」22章にある文献くらいは目を通して(だいたい美浜の図書館にあります)、
どういうことがこの世界で問題にされてきたかは、レビューした方がいいでしょう。
 
2. それを踏まえないと、肝心のソーシャルセーフティネット(SN)との関連が、よく分からないことに
なります。
あなたは「SNは定義上、行政が整備するもので、それができないところでは代替的にSCを活かす」と
いっているのか、それとも「SCがあれば、貧困層自身のSNが整備できる」といっているのか、
いまのところ不明です。
あるいは、「SNが財政的にムリだからやむなくSCに頼る」と言っているのか、
それとも「SNでは依存型の福祉なので「自立のため」にはSCこそ大切」と言っているのか・・・。
SCとSNに、あなた自身の定義を与えていかなくてはなりません。
ついでに細かいことを言えば、「貧困者」と「社会的弱者」はどういう区別なのか、
「潜在能力」とは(Galtung的な意味か、Sen的な意味か−「開発基礎論III」p.172の注(11)を参照)、
「ソーシャルキャピタル」と「地域の力」とは同じなのか、など気になります。
もちろんこれらは、今回の限られた紙数で書かれたことへのケチつけに近いので、これからゆっくりと
説明していって下さい。
 
3. ほんとうは、そうした概念分析の上で、それとの関連で、なぜインドネシア(とくにジョクジャ)を
とりあげるのか」を説明すべきでなのす。いずれにしても、この調査対象地選択の説明は(たとえ、
ジョクジャには知ってる人がいて調査がやりやすい・・・といったことでも正直に)どこかでまず必要です。
 
4. 第1章から第3章への流れは、インドネシア政府は貧しいのでSNはムリ→住民同士が相互扶助で
支えあう必要があるし、その力もある→ただし地方政府による支援が必要、ということのように読めます。
とりあえずは、それならそれで悪くはないが、自分で全体のストーリーをたえず明確に意識するように
して下さい。
 
5. 上の様なストーリーとすると、ここには幾つかの重大な必ずしも自明とは言えない前提が隠されています。
  (1) SCはSNの機能を代替できる(すべての側面について?どの程度に?)
  (2) ジョクジャには(潜在的にせよ?)SCが存在する
  (3) インフォーマルセクターの人々は一様にSCを利用して「自立」(どういう意味で?)を図っている
  (4) SCは外からの働きかけによって増やすことができるものである
  (5)地方政府はそのような働きかけができる立場にある。
これらのすべてについて、もしくは、たとえ一つに絞って他を括弧に入れてでも、きちんと考察しておくべき
です。
 
6. 「日本とのパートナーシップ」が突然第3章3節にくるのは、やや飛躍の感じがあります。
もしご自身の日頃のお仕事からの「感慨」があるのなら、「おわりに」章で、さらっと触れる程度がよい。
論文としてここで言うべきことがあるとしたら、いきなり「援助」論ではなく、他の類似ケースとの比較でしょう。
たとえばタイのUCDO/CODIの97年後の動きなどは、とてもrelevantのような気がします。
 
7. なお、「むすび」の章は、もっとはっきりと「第4章 結論」として、全体のまとめ、要するに何が言えたのか、
諸概念の関係をストーリーとして明確にしておき、さらに今後への研究課題や展望を述べるべきです。
 
8. 「論文計画」としては、各節ごとに大まかな執筆枚数を記して、重点配分が分かるようにし、既存の論文や
データや図表や参考文献がどの部分にどう使われるか、各節との対応付けを示しておくとよいでしょう。
また節の1段下の小見出しのレベルまでつくって、数行ずつその要旨を記して下さい。
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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   No.7 (2002/05/07 20:41)  先生、みなさんへ
   Name: L
 
  ソーシャルキャピタル(SC)に関する文献につきましては、こから出来る限りあたりたいと思います。
SCの定義については、世銀では「ある社会のもつ社会的相互関係の質と量を形づくる諸度、
関係性、諸規範を指す」とされていますが、現段階で頭にあるイメージは、「持続可能な地域社会の
実現を可能にする地域力」「地域が持つ問題対応能力」といったものと考えています。

今回の論文の中では、具体的な事例を基に、SCの機能として、
  1)地域住民の能力を開発する機能、
  2)地域住民のコミュニケーション能力や相互扶助活動を高める機能、
  3)地域社会内外のネットワークを形成する機能、
  4)困窮者の救済機能、
  5)地域経済の活性化や金融機関としての機能など
について分析できないかと思っています。

ご存知の方も多いと思いますが、インドネシアでは、日本でいうところの町内会(半官半民のようなところも
ありますが)や女性団体などの住民組織が社会に根付いていて、かなりの分野(治安、社会福祉、開発、経済、
情報等)で活動しています。また、相互扶助といった伝統的な助け合いの精神も日常生活に浸透しているなど、
既に蓄積されている地域力に期待が持てるのではないかと考えています。

ソーシャルセーフティネット(SN)については、SCがしっかりしていればなくてもいいわけでなく、やはり最低限の
整備が必要ではないでしょうか。ただその整備の質や量については経済発展や地域の特性等に即した整備の
段階があると思いますし、また先進国の後追いをして行政依存体質を増強させるのもどうかと思います。

また、SNを誰が整備をするべきかというところでは、
 1)国が整備すべき部分(経済危機で整備が叫ばれた部分?)、
 2)地方政府が整備すべき部分
  (経済危機でのソーシャルセーフティネットプログラムの経験を基に地方分権に併せて整備が求められて
   いる部分?)、
 3)地域が整備すべき部分(自分達で整備すべき部分)
そして、
 4)各家庭(個人)が整備すべき部分
とがあって、しかもそれらが相互にうまく作用する世の中が理想だと思うのですが、今回の論文では、
3)の地域が整備すべき部分の発展性について焦点を当ててみてはどうかと考えています。

この部分が発展すれば、地域の実情に即し、みんなが参加できて、救済対象者の自立心を損なわない
かたちでの地域社会福祉の向上が期待できるのではないでしょうか。
それがうまくいけば、地方政府は、それを後方支援する(例えば、許認可を緩和するとか)ことで、役割を
担うこともできます。

SNとSCの関係ですが、上記のように地域が中心となった、コミュニティベースのSNが発展するためには、
その素地としての地域力(SC)が必要になってくると思います。
よって、ご指摘の点は、「SCがあれば、貧困者自身のSNが整備できる」ということになります。
また、コミュニティベースのSN発展のためには、SCを増強させる必要があるとも言えます。
貧困者は一般の住民より多くの見返りをSCから受けるといったことからも、SCが増強されれば、
それだけ貧困者が救済されることにもなるのではないでしょうか。

次に「潜在能力」はやはり、セン的な「現実的、実質的、客観的に自分の選択肢として持っているが
選択されなかったという意味で潜在的」という意味の方が近いと思います。
(「社会的弱者」「貧困者」の定義はまた後日)

それから、なぜインドネシアのジョクジャカルタを選んだかと言いますと、まず、先に書きましたように、
インドネシアは歴史的に蓄積されたSCが期待できるということと、1997年の経済危機で貧困者に負担が
かかり、多くの人の生活が破綻に追いやられた中でも何とかサバイバルしたという事実が注目に値する
と考えました。
ジョグジャカルタ市(都市部の人口密度はかなり高い)でも経済危機以降、インフォーマルセクターに
追いやられる貧困層の人々が増加し、多くの人々が都心部にある公有地や空き地を不法占拠して
暮らしています。現地に住む知人からの情報では、人々は何とかサバイバルしてきたと聞きます。
(現地の大学で実態調査らしきものを手がけたと聞いています。)

このジョグジャカルタ市はかつて王国が栄えた地で、(日本の占領期でも一定の自治権が与えられて
いたし、日本の降伏後もスルタン制度を残す特別区となりました)地方分権化が進む前から現在に至る
まで、地域独自の文化や経済が発展しており、地域の特性を生かした地域開発に注目するのに適した
地域だと思います。
また、川沿いに不法占拠する人々の居住権を認め、住民組織と地方政府が協力してダイク(堤防)を
建設することをきっかけに住民組織による自立型住環境改善運動に成功している地域でもあります。
こういった背景の中、SCについての調査対象として適していると考えた次第です。

他にもいろいろご指摘をいただいている点は、後日ゆっくり考えてみないといけませんが、とりあえずは、
No.5にご指摘いただいた順番に、書いてみます。

1)SCがSNの代替をすることはある程度は可能ですが、例えば、その地域全体に災害が起きた時の
 ことを想定すると、やはり無理があると思います。

2)ジョグジャには地域住民組織を中心にしてSCが存在すると言えると思います。

3)インフォーマルセクターの人が利用するSCは?まずは、自分達(同業者、近所同士)で組織化し、
 相互扶助をすることが想定されます。

4)SCは外からの働きかけによって増やすことができるか?
 少なくとも、外からの圧力をかけることをしないことによって増強できるのではないかと思います。
 その他、外からの支援として考えられるのは、技術やノウハウ、資金の提供、他地域との経験交流が
 できるような機会の提供も考えられます。

5)地方政府はかなり重要な役割を担えるのではないかと思います。
 基本的な住民サービスの提供は地方政府によって行われていることを考えると、どんなにSCが
 発達した地域でも地方政府との連携がなければ、限界があると思います。
 また、SCが増強されるための条件として、地域にある主体(地方政府、住民組織、NGO等)が持って
 いるもの、特に情報などのソフトな要素を共有できるようにすることが重要かと思います。
 行政主導型の日本で言えば、行政側の情報公開というところでしょうか。

また、日本とのパートナーシップは確かに突飛ですので無理があるとかねてより思っていました。
他の類似事例として、ぜひ、タイの事例(UCDO・CODI)を教えていただけないでしょうか?
低所得者が組織した貯蓄・信用組合での資金を基に、メンバーへの老齢年金の支給や母子家庭保護
などを始める事例もあるといったことを聞いたことがあります。
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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   No.9 (2002/05/10 13:58)  L さんへ
   Name: K
 
  こんにちは K@バンコクです。
CODI(Community Organizations Development Institute)というマイクロクレジットを通じた貧困改善事業を
実施しているタイ政府組織でインターンをしています。

現在,CODIは経済危機に際して発生した都市貧困者の金融と信用貯蓄に関する問題にどのように 取り組み
解決していったのかという報告書を翻訳している最中です。
タイでは1993年3月に宮沢喜一元首相によって、タイにおける雇用促進、インフラ整備、輸出産業支援、
公衆衛生の改善、低所得者のための住宅購入支援等を目的とした融資が決められ、タイ政府は日本の
前海外経済協力基金(OECF)、前日本輸出入銀行、世界銀行から合計530億バーツ(≒1590億円)の融資を
受けました。この融資の総称が宮沢基金(Miyazawa Fund)であり、この宮沢基金はタイの経済成長に1999年
では0.8〜0.9%、2000年では0.3〜0.5%寄与したといわれています。
この宮沢基金530億バーツの一部、10億バーツ(≒30億円)が都市貧困層の生活改善プロジェクトに投入され、
都市貧困対策の政府組織であるUCDO(CODIの前身)はその中から2億5千万バーツ(≒7億5千万円)を
資本金としてMiyazawa revival loans(別名:Economic crisis loans)を設立しました。

このミヤザワローンはスラム住民個人には融資されず、スラム住民の加入する貯蓄信用組合(または貯蓄
グループ)が経済危機により失業したり所得が低下したことによって、貯蓄信用組合が他のローン(CODIには
目的別に応じた合計10種類のローンがある)からの借入金の返済が不可能になった場合に融資されます。
貯蓄信用組合は上限50万バーツ(≒150万円)、貯蓄信用組合を束ねるネットワークは上限500万バーツ
(≒1500万円)まで融資を受けることができます。利息は貯蓄信用組合は年利2%、ネットワークは年利1%で、
5年間以内に返済しなければなりません。2年間の返済猶予が認められているが利息だけは支払わなければ
なりません。2002年2月現在、融資総額は2億4千万バーツで147のプロジェクトに融資されており、25,995人、
700の貯蓄信用組合、66のネットワークが融資を受けています。

このミヤザワローンによる都市貧困者への特別融資措置、通称ミヤザワ計画によってCODIの貯蓄融資
プログラムと貯蓄信用組合の運営危機を免れたというのが報告書に書かれていることでありますが,
この経験を通じて開発基礎論Vのテキスト171ページに書かれてありますように、コミュニティ住民自らが
セーフティネットを編み出すきっかけをもったことも事実であります。
例えば、先月訪問したあるスラムコミュニティでは5年程前に他の地区の先例を参考にしながら住民の多くに
信頼され尊敬されているリーダーの尽力もあり、他からの助言なしに住民だけの力で貯蓄信用組合の通常の
活動以外に、もし会員が死亡すると貯蓄信用組合から見舞金が支払われるという貯蓄活動を始めました。
この貯蓄信用組合は上手く運営されているということでCODIや他の政府機関からの融資が行われて
いましたし、また、この貯蓄信用組合を参考にして、近隣地区に新たに16の貯蓄信用組合が設立され、
計17の貯蓄信用組合で1つのネットワークを形成していました。

CODの最近の動きでは、農村組合、職業組合、婦人組合、家畜組合、漁業組合、青年組合、老人組合、
冠婚葬祭組合、環境組合、コミュニティ議会など、都市スラム及び農村の貧困コミュニティ内の多岐にわたる
組合活動を組織のレベルを超えてネットワークを促進することで情報や経験の交流を行う事業所を設立する
ための検討がなされているところです。



[Re.1] 穂坂光彦(2002/05/11 01:11)>
Kさん、コメントありがとう。あなたにLさんへの一言を頼もうかと考えていたところでした。
Lさん、ここでKさんがシェアしてくれた情報、部分的に私も英語資料で持っています。
こんど直接お会いする機会に差し上げます。
またWorld Development,vol.30,no.3(2002)に、
Community-based Targeting Mechanisms for Social Safety Nets: A Critical Reviewという論文があるのを
知ってますか?私も斜め読みしただけだが、safety net programme を分権化してcommunityの手に任せても、
かえってlocal eliteが勝手にやりだしたり、social capitalを崩してしまうケースすらある、というようなことらしい。


[Re.2] 穂坂光彦(2002/07/24 12:52)>
World DevelopmentのJuly 2002に、
Poverty, Vulnerability and Social Protection in a Period of Crisis: The Case of Indonesiaという論文があります!


[Re.3] L (2002/07/25 22:10)>
ありがとうございます。早速入手してみます。
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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   Sent : Thursday , October 31 , 2002 2:27AM
   From : L
 
  穂坂先生

今回の調査では都心部川沿いのスカベンジャーや物乞いを職業としている世帯が多い1つのRT(隣組、
全27世帯)で簡単なアンケート調査(21世帯が回答)をした結果と、クレジットを中心とした経済的相互扶助
(中心はアリサン、含、違法な個人金貸しや自治体のクレジット、ごみの仲買人からの借金など)についての
インタビューが論文に反映できると思います。

もう一つ、もう少し北の外れにあるスカベンジャ−やベチャの運転手が多いカンポンにも訪問し、アリアンに
参加した見聞や、こちらのコミュニティは1年前のアンケート調査(今回の調査項目とよく似ている)結果
(詳しいですが、10世帯分のみ)が手元にあります。

あと、ジョグジャのカンポンを題材にしたいろいろな文献がありますのでそういったものや、今回訪問した
水道公社やカルラハン、NGOなどの活動を参考に市政府の役割などについて言及できると思いますが、
当初予定していました、コミュニティ内の各グループ(婦人会、町内会など)の活動内容や市役所各部署の
業務内容等のインタビューは、時間がなくてできませんでしたので、ここらへんはあいまいになると思います。

とりあえずのご報告です。
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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   Sent : Thursday , October 31 , 2002 7:33AM
   From : HOSAKA
 
  Lさん。ジョクジャのなかでひとつのRTだけとって、サンプルは21というのは、統計的にはあまり意味がない
ですね。その結果をどう生かすか、を考えなくては。インタビューを補足するとか。

問題はいくつかの外部介入とその後の展開の例を引いて、要するにあなたとして何が言えそうか、という
ことです。シンプルに、事例1、事例2、・・・というようにBOX的に列挙していって、まとめとして、総括的な
所見を述べて、主題たるスカベンジャー地区と関連づける、ということもあり得ると思います。個人的な直感
では、ここには、アリサンの重視など、なかなか捨てがたい資料がたくさんありそうに思いますよ。
それらは、エピソードとしては有益で楽しい事例集と思います。

それから目次案にコメントします。
「修士論文テーマ:都市居住貧困者・社会的弱者自立のためのソーシャル・キャピタルと地方政府の役割
 〜インドネシアを事例に〜Social Capital for Self-reliance of the urban poor / vulnerable people and
 the role of Local government - The case of Indonesia -」

「都市居住貧困者・社会的弱者」と並べることが本当に必要でしょうか。
「自立」という言葉も扱いが面倒。
「都市居住貧困者の安全保障のためのソーシャル・キャピタルと地方政府の役割
〜インドネシア・ジョクジャカルタ市のカンポン地域を事例に〜」ではいけませんか。
英語も Social Capital and the Role of Local government for Social Safety Net (human security?)
of the Urban Poor - A Case of Kampong Communities in Jokjakarta, Indonesia -では。

もっとも「都市居住貧困者の安全保障」というのも、ちょっと奇異な感じですね。
私はhuman securityと英語で考えていたので、まだ日本語はなじまないような気がしてきました。
「都市居住貧困者の「人間の安全保障」」「都市居住貧困者の安定保障」「都市居住貧困者の社会保障」
「都市居住貧困者のセーフティネット」など、これからいろいろ考えられたらよいと思います。
いっそもっと絞り込んで「都市貧困者の社会保障における相互扶助組織と地方政府の役割
〜インドネシア・ジョクジャカルタ市のスカベンジャー居住地区を事例に〜」にしたら分かりやすいかも
しれないし、七面倒くさいsocial capital論やカンポン改善の一般論を避けることができますよ。
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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   Sent : Thursday , October 31 , 2002 9:29PM
   From : L
 
  穂坂先生

ありがとうございます。ご指摘ごもっともです。もともとアンケートはコミュニティの様子を知る目的でしたので、
データ的には活用するのは難しいと思います。

コミュニティのリーダーの奥さんが、コミュニティの有志でガソリン売りの小規模ビジネスをして失敗した話
とか、カルラハンの融資は研修に参加しないといけないとか、インフォーマルなマネーレンダーの利子は
高いことは承知の上、日銭計算によりよく利用している(取引費用の問題)とかいった話をいくつか聞きました。
また、データとしては、他の人が実施した調査を引用することは考えられます。

それから、住民の生存戦略というものにフォーカスすると、どうしても行政が出てこないのですが、行政は
なにもしなくてもいいかというと、そうではなく、住民自身では解決できないものに対して、支援をすると
いった面での、外部者の役割といった意味も強調できるのではないかと考えています。

あと、大学の貢献度も結構高いと感じました。例えば、授業の一環として、学生は低所得コミュニティで
活動をしなければならないとか、先生も、セーフティネットの後に施策として実施されている、小規模ビジネス
を支援する目的の融資(P2KP)のアドバイザーとしても活躍してみえました。この融資は、調査対象となった
コミュニティでは実施されていない(トップダウンで対象となるカルラハンが選定される)のですが、いろいろな
コミュニティから提出された企画書を市役所で選定する際に意見をしているようです。

その他、経済的相互扶助ということで、いろいろおもしろい話はありそうなのですが、論文としてまとめることが
重要で、また、それまでに至っていないのが現状です。もう少し週末に考えてみます。
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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   No.53 (2002/12/05 01:49)  
   Name: 穂坂光彦
 
  名古屋スクーリングでのあなたのプレゼンテーションに対するミジレイ教授からのコメントについて考えて
おいてください。つまり、social capitalはcapitalである以上、経済的な見返りを生ずるものでないか。
どれだけの経済的returnがどのようにして生じたのか、というポイントは、この論文ではどこに出てくるのか
(アリサンの分析はそういう話になるのか。だとしたらこの論文はすごく良い点を突いている)、ということでした。

私自身は、social capitalからのoutputは貨幣的な価値を持たなくてもよい、と思っていますが、それに対して
ミジレイ氏は、それはこの概念の拡大解釈であり、もしそんなことであればわざわざsocial capitalなどと言わず、
相互扶助とか社会的ネットワークと言っておればよいのだ、ということでしたね。

この最後のポイントは、私が以前アドバイスしていたことと、逆の意味で、同じです。
つまり、あなたの題名からして、social capitalなどを持ち出さず、ストレートに「相互扶助メカニズム」くらいに
して淡々と調べたいことを調べればそれで済むのですが、わざわざ「social capitalとは」といった理論的な
文献探索に踏み込まなければならない、ということでした。
でもあなたはまさにsocial capital論に関心があるようですから、それはそれでよいでしょう。

だとしたら残る道は二つに一つです。
(1) ジョクジャのスカベンジャーたちが生み出した経済的returnを実証的に示すか、
(2) social capitalの定義のところで、「この論文ではsocial capitalとは必ずしも経済的returnを生ずるものでなく、
・・・・なものである」(という解釈も十分な合理性を持って主張しうる)と宣言することです。
 
No.4No.5No.7No.9L さん穂坂先生L さんNo.53
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