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Lさんのコメントに、コメントをさせてください。
「『売春』には『買い手』がいます。そこに両者のそれぞれの性産業があるのでしょう。
各国の状況は知りません。でも日本国内でも、それらの方々を国内で受け入れる組織・その場所、
或いは日本の男性をそこに繋がる国外の地域に送り出している旅行業者などがあるのでしょうね。」
「売春」という言葉を使用すると、「売る側」だけがクローズアップされてしまい、
「買う側」の部分があいまいなまま使われるので、なるべく「買売春」という言葉を使用したいと思っています。
買売春問題は主に「売り手」である女性をめぐる問題点が議論されがちですが、
「買い手」の問題が常にありますよね。
以前、NGOワーカーから研究者になってドイツに在住している女性が、
「なぜタイに買春にくる男性は、圧倒的に日本人とドイツ人が多いのだろうか。
共に敗戦国のなった日本とドイツは、戦後の国や社会の開発・発展過程で何か共通点はあるように思える。
経済発展優先の開発・発展は、人間性を疎外し、弱い者、自分が少しでも優位に立ち、
相手を従属的な立場におくことを期待して、タイやフィリピンなど東南アジア出身の女性と結婚したり、
買春したりするのではないだろうか」と発言していたことがあり、
おもしろいテーマだと感じ入ったことがあります。
既に研究者として活躍していた彼女は、共同研究を私に持ちかけましたが、
私は研究者としての立場にはなかったので共同作業に入ることができず残念でした。
また、Lさんが指摘されているように、「売り手」と「買い手」だけでなく「中間組織」である、旅行業者、
就労斡旋業者などの存在も見逃せません。
この「中間組織」こそが、買売春ビジネスでもっとも利益を上げている部分です。
ベトナム人研究者のタン・ダム・トゥルンは
著書“Sex, Money and Morality: Prostitution and Tourism in Southeast Asia”(Thanh-Dam Truong,1990)
(邦題『売春−性労働の社会構造と国際経済』明石書店、1993)で、航空業界を含めた旅行業界、
またベトナム戦争による米軍のR&R政策(Rest & Recreation)など国際政治、経済がタイでの性産業の
発達に与えた影響をていねいに分析しています。
性産業は、「売り手」や「買い手」の意識や倫理を超えたところで、
一大ビジネスとして機能していることがよくわかります。
Lさん「それらを「中間組織」、そして「買い手」の意識・その倫理性などをテーマにしたら、
この修士課程の議論には品が悪すぎますかー。」
買売春に関すること、性に関する話題(「買い手」の意識など)を議論することは、
品が悪いことではないと思います。ぜひ議論しましょう。
正直言うと、大学院の講義や議論が始まってから、議論されている内容などが
自分の関心テーマとどこか焦点がかみ合わず、居心地の悪い思いを感じたことがありました。
この大学院の名称である「国際社会開発」の中の「開発」は、地域開発や教育、医療などの
社会開発などが主流なのかな、と。
けれど、「開発」を「人間がより良い状態で生活できるようにする変化」、
また「好ましい変化」(ロバート・チェンバース『参加型開発と国際協力』)と捉えるならば、
「開発」を国際協力機関が国際協力事業を実施している専門分野名称に引きずられて
解釈する必要はないかな、と思い始めています。
このように考えられるようになったのも、やはり大学院でいろいろな方の意見を聞き(拝見し、かな?)、
ときどきさせていただく発言に何らかのリスポンスがあることで、
自身の経験を整理、客観化する訓練ができるようになってきたからでしょう。
大学院に入ってよかったな、と実感する今日この頃です。
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