通信制大学院国際社会開発研究科修士課程 開発基礎論V

  開発基礎論V
 
 これは開発基礎論Vの授業の様子をお伝えするために、2002年度の同科目掲示板に投稿された
 約200の書き込みの一部を抜粋したものです。冗長さを防ぎ、また参加院生の個人情報保護の目的
 から、内容に修正・編集の手を加えてあります。(穂坂光彦)
 
   このページは以下にまとめてあります見出しごとに、ご覧ください。
 
 
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   No.164 (2002/07/12 12:11)  穂坂先生へ
   Name: R
 
  テキストを全部読み終えました。読みやすく編集してあったので何とか少しは理解できたように思います。
少しだけ私が付け加えたい箇所がありましたので、お伝えします。

こんな事も考えられるでしょうか?
第10章「人口の増加と移動」にあるインドのケララ州に於いての男女比の解説です。
この統計は、1991年のものですから昔の事は解らないので何とも言えないのですが、
ケララの男女比は、もしかすると、2つの点が他の州と違っているかもしれないと思ったのです。

1つは、ケララ州にいるナヤーカーストですが、このカーストは母系家族です。
クシャトリアなので、父系家族にすると家が破滅するかもしれないと昔の人は考えたのでしょうか?
それで、昔から女性が圧倒的に権限を持っていて、男性は名前は変りませんが婿養子のような感じです。
現在でも娘がいる家では必ず親は娘と暮らして男性が娘の家にきます。
もちろん、息子しかいない家では女性がお嫁さんとしてきますが。

2つ目は、クリスチャンが多いのでヒンズー教徒のように死んだ時、
棺を抱える息子に執着しなくて済むので女の子でも男の子でもいいのだと思っているのかな?と。

主人がナヤーカーストなので読んでいてこんな事を感じたのです。いかが思われますでしょうか?
 
ジェンダー分析  No.164No.167
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   No.167 (2002/07/12 23:52)  No.164 のRさんへ
   Name: 穂坂光彦
 
  ケーララ州の女性の社会的地位が相対的に高いこと、
さらに一般的に、(経済指標に比して)社会指標がインド諸州のなかで抜群に高い値を示すこと、に
ついて、つまりいわゆる開発の「ケーララモデル」について、その背景を探る論文は、たくさんあります。
ご指摘のように、指導的カーストが母系制の伝統を持つために州全体に影響が及び女性の地位が高い、と
いう点も、実はよく指摘されています。
そのことは、ここで比較されている北西部の経済的先進州が父系制が強く、
つまり嫁いだ女性は婚家の財産と見なされる、という社会であって、
そこでの女性のありようが男女比に影響している、という議論と対照しながら指摘されるわけです。

クリスチャンは、宗教的文化として、男子偏重が少ない、という点はどうなのでしょうね。
「棺の担い手」という話は初めてお聞きしました。
ふつう男子偏重は、家父長社会での労働力としての経済的役割から説明されると思いますが、
そういう文化的側面も(もし真実とすれば)重要かもしれませんね。
一般的には、ケーララでのクリスチャンの役割は、植民地下でのミッショナリによる医療や教育の推進と
いう点に焦点が当てられることが多いようです。

しかしこれら文化的歴史的要因は、ケーララの社会発展の基礎をつくったでしょうが、
女性や被差別カーストの地位が向上したのは独立後のことです。それに貢献したのは、
被差別民の解放運動や、共産党政権による民主的施策であった、という指摘がよくなされます。
男女比のバランスは伝統的要因だけで説明できるものではないようです。
だからこそ「開発」との関連で、ここでは議論しているわけなのです。


[Re.1] R (2002/07/13 20:02)>
先生ありがとうございました。
ヒンズーの人が死ぬと、焼き場に持っていくとき、息子ではないといけないと言う決まりが在ると聞いています。
息子が居ない場合は甥の仕事になります。皆がそうかどうか不確かですが、これは主人から聞いた話です。
 
■ ジェンダー分析  No.164No.167
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